こんな悩みをスッキリ解消
- 運転に自信がなく、免許証を返納しようと思っている高齢者
- 高齢者に運転免許を自主返納して欲しいと考える家族
- 運転免許の返納による問題の解決方法を調べている人
連日報道されている、高齢者による痛ましい交通事故のニュース。
高齢者が運転をやめないのには、
- 「やめたくない」
- 「運転をしなければならない」
の2パターンがあります。
自主返納の妨げになっている問題も多く、まずは問題を解決しなければ自主返納には繋がりません。
そこでこの記事では、自主返納を考える高齢者とその家族に向けて、運転免許の返納を阻む問題とその解決方法をわかりやすく紹介しています。
自主返納の方法を調べている人はこの記事を読むことで、返納方法や受付場所、返納によって受けられる特典が分かります。
高齢者の説得を試みたい家族が読めば、「高齢者はなぜ運転免許を自主返納しないのか」が分かり、説得方法が身に付きます。
運転免許の自主返納の流れ3ステップ
運転免許の自主返納は非常にカンタンで、最寄りの警察署で半日あれば完了します。
ここでは運転免許を自主返納する際に必要な書類や、当日の手続きの流れなどを解説していきます。

運転免許証の返納自体は非常にカンタンな手続きですが、以下の書類を用意しておく必要があります。
必要書類 | 入手方法 | 費用 | 備考 |
---|---|---|---|
運転免許証 | すでに持っているもの | 無料 | 有効期限内のもの |
認印 | すでに持っているもの | 無料 | 都道府県によっては必要 |
運転免許取消申請書 | 警察署または運転免許センター | 無料 | 運転経歴証明書の交付を受ける場合に必要 |
交付手数料 | 現金 | 1,100円 | 運転経歴証明書の交付を受ける場合に必要 |
申請用写真 | 証明写真 | 800円 | 運転経歴証明書の交付を受ける場合に必要 警察署で手続きする場合に必要 |
運転経歴証明書は自主返納と同時に交付してもらう必要があります。
運転経歴証明書が必要かどうかで用意する書類が異なるので、上記の表で必要書類をチェックしておきましょう。
ステップ1.窓口で「運転免許を返納したい」と伝える
運転免許の自主返納は、基本的に本人が行うことになっています。(※代理で行う方法は次の章「家族が代理で運転免許を返納する方法」で解説しています。)
年齢は何歳からでもいいので、車の運転に自信がなくなった時が返納のタイミングと言えるでしょう。
自主返納は一部だけでも可能。「大型免許だけ返したい」「自動二輪だけ返したい」という選択もできます。
総合窓口で運転免許を自主返納したいと伝えれば、対応する窓口に案内してもらえます。

警察署と運転免許センターの受付時間は下記の表の通りです。
場所 | 受付時間 | 休み |
---|---|---|
警察署 | 8:30~17時まで | 土日祝・年末年始 |
運転免許センター | 8:30~11:45 13:00~16時まで |
土・祝日・年末年始 |
基本的には平日の日中に行うことが理想とされていますが、運転免許センターは日曜日でも自主返納の受付をしているケースもあります。
受付時間は各都道府県によって違うため、その日に自主返納の受付が可能かどうか、事前に最寄りの警察署に問い合わせておくことをオススメします。
ステップ2.書類に必要事項を記入する
自主返納の際は、運転免許取消申請書に必要事項を記入。
この書類は警察署の窓口でもらうことができ、記入もその場で終わる程度の情報量です。
※出典:e-GOVより
一部返納をしたい場合は、
- 「取消しを申請する免許の種類」
- 「受けたい他の免許の種類」
に必要事項を記入します。
一部都道府県では認印が必要となるケースがあるので、念の為、認印を持参することをオススメします。
運転免許取消申請書の記入が終わったら、運転免許証と一緒に窓口に提出します。

ステップ3.運転経歴証明書を受け取る
身分証の代わりになる、「運転経歴証明書」を受け取る場合は、そのまま交付の手続きを行います。
運転経歴証明書とは?
運転経歴証明書は、免許証を自主返納した人が交付を受けられる身分証明書
運転免許証と同じサイズのカードに、顔写真や住所氏名などが記載されています。
※出典:千葉県警察「免許の返納をお考えの方で、運転経歴証明書の交付を希望される方」より
これがあれば、運転免許証を身分証明書として使っていたシーンの全てで代用が可能。
警察署や運転免許センターで交付が受けられるので、同時に申請するのを忘れないようにしましょう。
運転経歴証明書の申請条件
交付を申請する際には、以下の条件を満たしている必要があります。
- 条件1.これから運転免許証を自主返納する人
- 条件2.運転免許証を自主返納してから5年以内の人
当然ですが、運転経歴証明書は自主返納をした人だけが手に入れることができるものです。
有効期限内の運転免許証を自主返納する、または自主返納してから5年以内の人が申請できます。
免許停止の処分などを受けている人は申請できないので注意しましょう。
運転経歴証明書の発行方法
運転経歴証明書の交付は、運転免許証を自主返納する際に同時申し込みをします。
運転免許センターなら申請用の写真を撮影して交付が受けられますが、警察署で申請する場合は証明写真を持参する必要があります。

交付の手数料が1,100円かかるため、窓口で支払ったら受付は完了。その日のうちに交付されるので、そのまま持ち帰ることが可能です。
運転経歴証明書は身分証明書として使えるのはもちろん、タクシーやバスに割引価格で乗ることができます。
運転経歴証明書で受けられる特典
運転経歴証明書の交付を受けると、バスやタクシーが割引になります。
特典を受ける方法は非常にカンタンで、乗車の際に運転経歴証明書を提示するだけ。
都道府県によって割引率は異なりますが、たったこれだけでタクシーやバスに安く乗ることができるのです。
本日、実家父が免許証を返納。父母はハイヤー会社で働いていて、私達兄弟はこれで育てられたので…背中を丸めた父母が手を繋いで免許を返す姿は切なくて涙が出た😢
代わりに運転経歴証明書を貰ったよ。これで地元のタクシーは半額。他にも割引して貰えるサービスあるみたい。長い間運転ありがとうね💕 pic.twitter.com/NOpHa1ARhB— えっちゃん。 (@takulove_m) 2019年5月17日
自主返納5年以内の人は申請したら「運転経歴証明書」が発行できるそう。知らなかったので早速父へお知らせ。
更新不要の生涯の身分証明書になる。
タクシー代割引とかサポート企業のサービスが受けられる。一覧見たらまだまだ少ないけど、どんどん増えたらいいし、認知度上がればいい。— 美々みみみ (@3mi3mimi) 2019年6月4日
運転経歴証明書で受けられる割引は乗り物だけではなく、飲食店や買い物でも割引やサービスが受けられます。
この際も会計時に運転経歴証明書を提示するだけで、特別な手続きなどは必要ありません。
これが運転免許を自主返納する流れです。
最寄りの警察署で受け付けしてくれる上、費用もかからず時間も30分程度で終わります。
ただし運転免許を返納したらその場で車に乗ることができなくなるので、警察署や運転免許センターは公共交通機関で行きましょう。


家族が代理で運転免許を返納する手続き方法
運転免許証の自主返納は、あくまで本人が行うことが前提です。
しかし健康上の理由などで、本人が手続きを行えない可能性もあります。
代理人として有効となる人の条件
高齢者に代わって運転免許証を返納する場合、以下の条件に当てはまる人が代理人として認められています。
- 条件1.親族(同居・別居は問われない)
- 条件2.高齢者が入院している病院の職員など
- 条件3.福祉関係の有資格者
- 条件4.成年後見人
成年後見人とは、「認知症」「知的障害」「精神障害」などの理由で判断能力の不十分な方々をサポートする家庭裁判所により選ばれた人
親族は3親等まで有効で、入院中や老人ホームの職員なども返納を代行できます。
代理で返納する場合は、これから紹介する書類が必要となります。
代理返納に必要な書類
高齢者に代わって運転免許証を返納する際は、以下の書類が必要です。
- 申請者の運転免許証
- 委任状
- 確認表
- 代理人の印鑑
- 入院証明、診断書など
- 代理人の身分証明書
- 申請者と代理人の関係が確認できるもの
委任状は誓約書と同じになっており、確実に本人の意思により免許の返納を行うことを誓約する必要があります。
※出典:千葉県警察「代理人による運転免許の自主返納申請」より
代理人が返納を行う場合も、運転免許証を持つ高齢者が手続きに同意している必要があります。
もしその意思確認ができない場合、診断書や入院証明書などで証明をしなければいけません。
また確認表はチェックリストになっており、全ての書類が集まっていることを確認するために必要です。
※出典:千葉県警察「代理人による運転免許の自主返納申請」より
これらの書類を用意したら、高齢者と代理人の関係が確認できる住民票や戸籍抄本を用意しましょう。
病院や老人ホームの職員は、施設側が発行する身分証明書を持参する必要があります。
これらの書類を全て用意したら、最寄りの警察署または運転免許センターに出向き、運転免許証の返納手続きを行います。
受付時間は下記の表の通りなので、必ずその時間内に手続きを行いましょう。
場所 | 受付時間 | 休み |
---|---|---|
警察署 | 8:30~17時まで | 土日祝・年末年始 |
運転免許センター | 8:30~11:45 13:00~16時まで |
土・祝日・年末年始 |
交付手数料の1,100円を支払えば、運転経歴証明書を発行してもらうことも可能です。
必ず返納前に本人と話し合い、運転経歴証明書を発行するかどうか決めておきましょう。
自主返納で受けられる特典
運転免許を返納して移動手段を別のものにしたら、当然出費が増えてしまいます。
事故のリスクがなくなるとは言え、あまりに出費が増えるのであれば自主返納をためらってしまうのも事実。
そこで、自主返納のハードルを下げるために国や自治体が様々な特典を用意しています。
全国の免許返納特典と支援施策
下記ページに全国の自治体の取り組みを一覧を載せておりますので、一度確認してみましょう。
都道府県 | 掲載ページ |
---|---|
北海道 | 高齢者の交通事故防止(北海道) |
青森県 | 運転免許自主返納者支援事業について(青森県警察) |
岩手県 | 運転免許証の自主返納を考えてみませんか?(岩手県警察) |
宮城県 | 運転免許自主返納者に対する支援施策の実施状況(宮城県警察) |
秋田県 | 運転免許自主返納高齢者支援サービス店一覧(秋田県警察) |
山形県 | 運転免許自主返納者に対する支援(山形県警察) |
福島県 | 運転免許証の自主返納に関するQ&A(福島県警察) |
東京都 | 高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧(警視庁) |
茨城県 | 高齢運転者運転免許自主返納サポート事業を開始します(茨城県) |
栃木県 | 高齢者運転免許証自主返納支援事業(栃木県) |
群馬県 | 高齢者の運転免許証自主返納サポート(群馬県) |
埼玉県 | 高齢者の交通安全(埼玉県警察) |
千葉県 | 運転免許自主返納(運転免許の申請取消し)について(千葉県警察) |
神奈川県 | 神奈川県高齢者運転免許自主返納サポート協議会 加盟・協力企業・団体一覧表(神奈川県警察) |
新潟県 | 新潟県内における高齢者の運転免許自主返納の支援状況(新潟県警察) |
山梨県 | 運転免許自主返納(山梨県警察) |
長野県 | 高齢運転者の方へ(長野県) |
静岡県 | 運転免許自主返納者サポート事業?運転免許自主返納者をサポート!?(静岡県警察) |
富山県 | 富山県の各自治体における運転免許自主返納支援事業一覧表 |
石川県 | 市町別運転免許証自主返納支援(石川県) |
福井県 | 高齢免許返納者サポート制度をご利用ください(福井県) |
岐阜県 | 運転免許証の自主返納(運転免許の申請による取消し)と運転経歴証明書のご案内(岐阜県警察) |
愛知県 | 高齢者交通安全サポーター一覧(愛知県警察) |
三重県 | 運転免許証自主返納サポートみえ(三重県) |
滋賀県 | 運転免許証自主返納高齢者支援制度(滋賀県警察) |
京都府 | 高齢者運転免許証自主返納施策について(京都府) |
大阪府 | 高齢者運転免許自主返納サポート制度について(大阪府) |
兵庫県 | 運転経歴証明書を提示して受けられる特典の一覧(兵庫県警察) |
奈良県 | 高齢者運転免許自主返納支援制度(奈良県警察) |
和歌山県 | 運転免許の自主返納(申請取消) ※特典・支援の一覧ページはなく市町村のHPに記載 |
鳥取県 | 運転免許証を自主返納される方への支援制度のお知らせ(鳥取県警察) |
島根県 | 運転免許証返納に伴う支援制度(島根県警察) |
岡山県 | おかやま愛カード(岡山県警察) |
広島県 | 運転免許証を返納された方へ(広島県警察) |
山口県 | 運転免許自主返納者に対する支援事業所一覧表(山口県警察) |
徳島県 | 運転免許証の自主返納制度について(徳島県警察) ※特典・支援の一覧ページはなく市区町村のHPに記載 |
香川県 | 運転免許の自主返納(香川県警察) |
愛媛県 | 運転免許自主返納支援事業所一覧(愛媛県警察) |
高知県 | 運転免許証の自主返納支援(高知県警察) |
福岡県 | 運転免許証を返納された高齢者に対する支援サービスの紹介(福岡県) |
佐賀県 | 自主返納(運転経歴証明書)のご案内(佐賀県警察) |
長崎県 | 運転免許証を自主返納した方への支援 |
熊本県 | 運転免許証自主返納者へのサポート制度(熊本県) |
大分県 | 高齢者の運転免許自主返納支援制度(大分県) |
宮崎県 | 高齢者運転免許証返納メリット制度(宮崎県警察) |
鹿児島県 | 高齢者の運転免許自主返納に対する支援制度(鹿児島県警察) |
沖縄県 | 運転免許の自主返納制度・運転経歴証明書について(沖縄県警察) |
※2025年2月現在
例えば、下記のように様々な市町村が特典を用意しております。
市町村 | 特典の内容 |
---|---|
福島県只見町 | 乗り合いタクシー利用券100枚(5万円分) |
栃木県鹿沼市 | バスの終身無料券を交付 |
千葉県いすみ市 | 市バスの乗車運賃が半額、タクシー乗車運賃の1割引 |
山梨県笛吹市 | タクシー券(15,000円分)を交付 |
岐阜県富加町 | タクシー券(24,000円分)を交付 |
※2025年2月現在
ほとんどの都道府県で、運転経歴証明書を提示するとバスやタクシーの割引が受けられます。
多くの場合は1割引となりますが、上記の市町村ではそれ以上の特典を用意しています。
民間企業が行っている自主返納特典例
運転免許の自主返納は、民間企業でも行われております。

民間企業 | 特典の内容 | 条件 |
---|---|---|
日本通運株式会社首都圏支店 | 引っ越しの通常料金から10%割引 | 運転経歴証明書の提示 |
セコム | ココセコム加入料1,000円割引 | 運転経歴証明書の提示 |
三越伊勢丹 | 有料催事(文化展・美術展など)無料 | 運転経歴証明書の提示 |
鴨川シーワールド | 入場料700円割引 | 運転経歴証明書の提示 |
※2025年2月現在
※出典:警視庁公式サイト「高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧」より
民間企業の特典も都道府県によって大きく異なりますが、配送料を割り引くサービスが用意されていることが多いです。
運転免許を自主返納した人専用の定期預金を用意する金融機関などもあり、運転経歴証明書を提示することで数多くのサービスが受けられます。


高齢者の運転免許自主返納が進まない理由
高齢者は事故を起こすリスクが高いのも事実。
内閣府の発表によると、75歳以上の運転者が起こす事故の件数は、75歳未満に比べて2倍以上とされています。
※出典:内閣府「特集 「高齢者に係る交通事故防止」」より
平穏な老後の生活のためにも運転免許を自主返納したいと考える高齢者は少なくありません。
しかし自主返納が進まないいくつか理由があります。
高齢者が運転免許を自主返納しない5つの理由と対処法
シニア世代に取ったアンケート結果によると、運転免許を自主返納しない理由の多いものとして以下5つが挙げられています。
※出典:シニアコム「月イチアンケート Vol.27」より
高齢者が運転免許を自主返納しない5つの理由
- 理由1.買い物、遊びに使う
- 理由2.荷物の運搬
- 理由3.家族の送迎
- 理由4.公共交通機関が不便
- 理由5.通院
このアンケート結果を見ると、高齢者は「現在の生活を維持するためには車の運転をしなければいけない状態にある」と言えます。
都心部と違い、地方は公共交通機関が発達していないのが実情。
そのため生活のために車は必要不可欠なアイテムとなっているのです。
本当ならば、高齢者の運転を法的に禁止にしてほしいと言いたいところだけど、地方にとっては車が無ければ生活できないのも事実だから簡単には言えない。返納を勧めるのならば、それを後押しできる環境整備が必要だよね。
— kakuni@デレ7th千葉 (@kakuni9215) 2019年6月14日
特に通院となれば公共交通機関がなければ車で行くしかないため、自主返納をしたくてもできない高齢ドライバーも一定数います。
また、足腰が弱っていることからも公共交通機関はしんどく、運転免許証を持ち続けている高齢者も沢山いるのです。

自主返納できない理由 | 解決策 |
---|---|
買い物、遊びに使う | タクシーなどを使う |
荷物の運搬 | 宅配サービスを使う |
家族の送迎 | タクシーなどを使う |
公共交通機関が不便 | 乗り合いタクシーなどを使う |
通院 | 介護タクシーなどを使う |
身分証明書として使う | 運転経歴証明書を発行する |
解決提案①車を買い物、遊びに使いたい人は「タクシーを使う」
定年を迎えれば自由にできる時間が増え、趣味や遊びで車を使いたいという人も多いはず。
そこで車が必要になるという高齢者も多いのですが、移動手段をタクシーにするという方法があります。
タクシーは高いように思えますが、シミュレーションをしてみると自家用車より安いパターンがあるのです。

1年でかかるお金 | 自家用車 |
---|---|
車両代 | 400,000円 ※200万円の車を5年乗ると仮定 |
自動車税 | 34,500円 |
車検代 | 60,000円 ※3年、5年で2回受けると仮定 |
ガソリン代 | 104,000円 15km/Lで月1,000キロ走行と仮定 |
任意保険料 | 40,000円 |
合計 | 638,500円 |
コンパクトカーとはいえ、自家用車を維持するためには年間約63万円が必要です。
初乗り710円のタクシーに10キロ乗ると、乗車料金は約3,000円。タクシーを63万円分も使うためには、212回乗る必要があります。


試算で紹介した「年間12,000キロ」をタクシーで代用すると、単純計算で約370万円かかります。
そのため距離数が増えるほど自家用車の方が安くなりますが、長距離移動はタクシーではなく新幹線や飛行機を使うなどの工夫をすれば、費用は抑えられます。

解決提案②車を荷物の運搬に使いたい人は「宅配サービスを使う」
地方に住む高齢者の中には、食材や日用品など、買い物で荷物の運搬に車を使いたいという人がいます。
確かに買い物で車が必要なシーンは多く、一家に一台は車があった方が良いと考えるのも無理はありません。
しかし最近はスーパーなどの宅配サービスが発達しており、車を使わずとも買い物が可能です。

サービス名 | 宅配可能な品 | 注文方法 | 費用 |
---|---|---|---|
コープデリ | 生鮮食品 惣菜・冷凍食品 日用品 飲料・お菓子 など |
ネット 注文用紙 電話 |
配送料 180~200円 |
楽天西友ネットスーパー | 生鮮食品 惣菜・冷凍食品 日用品 飲料・お菓子 など |
ネット | 配送料 432円 |
ロハコ | 生鮮食品 惣菜・冷凍食品 日用品 飲料・お菓子 など |
ネット | 配送料 216円 ※3,240円以上の買い物で無料 |
最近は多くのネットスーパーで、生鮮食品などを購入することができます。
配送料も500円以下で収まるので、車で買い物に行くガソリン代などを考えると宅配サービスの方が安くなるケースもあります。
ネット注文がメインになるのがデメリットですが、コープデリは手書きの注文用紙や電話による注文を受け付けています。
インターネットが使えない世代でも気軽に宅配サービスが利用できるので、無理に車で買い物に行く必要が無くなりつつあります。

解決提案③車を家族の送迎に使いたい人は「タクシーなどを使う」
前述の通り、自家用車を1年間維持するお金で、年間212回ほどタクシーに乗ることができます。
家族の送り迎えを高齢ドライバーが引き受けるのはリスクも高いため、送迎してもらう家族が協力して自主返納をしやすい環境を整えることも大事です。

解決方法④公共交通機関が不便な人は「乗り合いタクシーなどを使う」
地方の過疎地で大きな問題になっているのが、「公共交通機関が不便」というもの。
電車やバスが整備されておらず、やむを得ず自家用車で移動する高齢者がいるのが実情です。
こうした高齢者は運転免許を自主返納したら、その後の移動ができなくなってしまいます。
この問題を解決する手助けになるのが「乗り合いタクシーの活用」です。
国も地方の公共交通機関が発達していない問題を把握しており、各地域のNPO法人が自家用車で高齢者を送迎できる制度を導入するなど、積極的に問題の改善に努めています。
とはいえまだまだ整備が進んでいない現状もあり、乗り合いタクシーの有無や料金については、市区町村の役所に問い合わせる必要がある点がデメリットと言えます。

解決提案⑤車を通院に使いたい人は「介護タクシーなどを使う」
自分の通院、または夫婦どちらかの通院のために車を使う高齢者も数多くいます。
自分で歩くことが容易な場合は、前述した乗り合いタクシーや普通のタクシーを使って通院しましょう。
しかし、歩行が困難で車による通院が不可欠な場合、介護タクシーが利用できます。
介護タクシーを利用するためには、各市区町村の役所でケアマネジャーへ相談する必要があります。
介護タクシーの利用が認められれば、介護保険を使って専用のタクシーで通院することが可能。
万が一介護タクシーの利用が認められなかったら、介護保険適用外の「福祉タクシー」を利用することになります。
無理に自家用車で通院を続けるより、一度ケアマネジャーに相談してみることをオススメします。

認知症の親を何とかして自主返納させる方法
高齢者による交通事故で多いのが、「認知症にも関わらず車の運転をした」というもの。
社会的にも大きな問題となっており、家族によって認知症の高齢者による運転を止めさせる必要があります。
池袋の事故のニュースを見た80代のおじいさんがいた。
明らかに認知症。免許の返納を進めても
「俺はあぁはならない、いつも運転しているから大丈夫」
自信満々で、聞く気なんてまったくない。
この人だけじゃない、こういう人が世の中には山ほどいるよ。道を歩くときは本当に気をつけて😥
— あお (@ao_ame0321) 2019年4月24日
認知症の状態で車を運転すると、事故のリスクは当然高まります。
このような場合、家族がサポートして一日でも早く運転免許を自主返納するように勧めましょう。

認知症ドライバーの運転をやめさせる方法4つ
- 方法1.家族が説得して運転免許を自主返納させる
- 方法2.認知症の診断書を取る
- 方法3.車の処分
- 方法4.車を運転しなくてもいい環境づくり
これから、これらの方法を実践するためにはどうしたらいいのかを紹介していきます。
方法1.家族が説得して運転免許を自主返納させる
運転免許の自主返納は本人が行うのが一番手っ取り早い方法ですが、頑なに自主返納を拒否する場合もあります。
その場合は、家族が説得して自主返納させる方法を取りましょう。

高齢者に代わって家族が運転免許を返納する場合でも、本人の同意が必要です。
本人が頑なに自主返納を拒んでいる場合は、強制的に返納するのができないというのが現状です。
本人の同意が得られればすぐに代理返納ができるので、まずは粘り強く交渉をしましょう。
交渉の際に、以下の会話例が参考になります。



高齢者の中には、車の運転を生きがいにしている人もいます。特に車好きな人であれば、自分の運転に自信がある人も多いはず。
頭ごなしに自主返納を勧めると、思わぬトラブルに発展しかねません。
そこで別の楽しみや生きがいを見つける手がかりを一緒に探してあげるなどの工夫をしてみましょう。

方法2.認知症の診断書を取る
あまり使いたくない方法ではありますが、平成25年の6月の法改正により、医師が認知症の診断書を出せば、公安委員会が運転免許の取消処分ができるようになりました。
第百一条の六 医師は、その診察を受けた者が第百三条第一項第一号、第一号の二又は第三号のいずれかに該当すると認めた場合において、その者が免許を受けた者又は第百七条の二の国際運転免許証若しくは外国運転免許証を所持する者(本邦に上陸(同条に規定する上陸をいう。)をした日から起算して滞在期間が一年を超えている者を除く。)であることを知つたときは、当該診察の結果を公安委員会に届け出ることができる。
第百三条 免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
一の二 認知症であることが判明したとき。
※出典:e-GOV「道路交通法」より
医師の診断から運転免許証の停止処分に至るまでには、以下の手順が必要です。
- 手順1.医師による診断
- 手順2.医師が認知症と診断し、本人に車の運転をやめるよう指導する
- 手順3.それでも本人が運転する場合、医師が再度指導する
- 手順4.それでも運転をやめない場合、医師が公安委員会に書類を提出する
医師は公安委員会に書類を提出する前に、2度本人または家族に「運転をやめるよう」指導する必要があります。
それでも本人が運転をやめない場合、医師は以下の書類を公安委員会に提出します。
※出典:大阪府医師自動車連盟「道路交通法に基づく一定の症状を呈する病気等にある者を診断した医師から公安委員会への任意の届出ガイドラインについて」より
公安委員会は医師による認知症の診断と、二度に渡る指導の記録を確認し、認知症ドライバーによる運転が確認できたらそのドライバーの運転免許を停止または取消処分することができます。
どうしても本人が説得に応じない場合、医師と連携して運転をやめさせるようにしましょう。
半年で3回自損事故を起こしたうちの叔母(当時71歳)。3回目は家電量販店の駐車場でフェンスに突っ込んで廃車に。事故の翌日「昨日事故したんだけど車がない」と親戚の家へ言いに行ったので、びっくりして病院へ連れて行ったら認知症が発覚。お医者さんに説得してもらって運転免許返納→
— 三國青葉@LINE文庫にて新作刊行予定 (@mikuni_aoba) 2019年5月15日

方法3.車の処分
これも本人の同意が必要ですが、高齢者が運転する車を処分してしまうという方法もあります。
家族が代理で車を売却する場合、本人が必要な書類に加えて以下のものが必要になります。
代理で車売る時に必要な書類
- 所有者の実印を押印した委任状
- 所有者の印鑑証明書
- 車を売る人の身分証明書
車は本人の財産であるため、委任状が必要になります。
委任状は、財産の所有者である高齢ドライバーが、あなたに車売却の手続きを代行してもらうことを認めた証明になります。
そのため本人が車を手放すことを頑なに拒んだ場合、代理で車を売ることはできないのです。
その場合は前述した医師と公安委員会による免許停止の方法と合わせて、高齢ドライバーから車を取り上げてしまう必要があります。


方法4.車を運転しなくてもいい環境づくり
ここまでは、半ば強制的に高齢者から免許や車を取り上げる方法を紹介してきました。
しかし大事なのは、本人の意思を尊重すること。「どうして車が必要なのか」を一緒に考え、車がなくても生活しやすい環境を一緒に作っていくことが必要です。

しかし高齢者に「運転免許を返納して欲しい」と話すことは、高齢者にとっては今までの生活が一変することになります。
話し合いは難航することが多く、苦労する家族の口コミも目立ちます。
父親の「免許返納」の件で悩んでる。
実家に行って話し合いしてきたけど、頑として受け入れてくれない。それどころか怒り出して、シルバーマークすら外してしまった・・・「寄ってたかって年寄りをなめやがって」って。
踏み間違え防止装置を着けることは約束してくれたので一歩前進か。— キノコの山@金の唐揚げ (@akimmmmm) 2019年6月14日

話し合いの際は、事故のリスクや事故を起こした後の生活についてきちんと考えてもらう必要があります。
「事故を起こしたらどれだけ大変か」を分かってもらうことで、自主的に返納に向けて動いてもらうようにするのです。

園児の事故に絡む事でもあるけど、半分ボケかかってる親父に認知症の診断来る前に免許返納させる説得に長らく苦労してましたが
孫の可愛い字でジィジしんぱいだから返納してちょ♡て書かせてたら当日返納に行かせる事に成功しました
この技シェアします
— 2代目琵琶丸 (@2eTzXR96gXdOdGV) 2019年5月9日
高齢者にとって、自分が育てた娘や息子に生き方を非難されるのはストレスになりかねません。
孫や家族以外の医師などから説得されることで、「仕方ない」と感じさせることも大事です。
そのためにも、運転免許の自主返納を勧めるためには、しっかり準備をして話し合いに臨みましょう。

運転免許の自主返納について相談したい
高齢者に運転免許の自主返納を勧めるのは非常に大変ということが、前章の説明で分かりました。
とはいえ事故のリスクは日に日に高まるため、「どこかに相談したい」と考える人も少なくありません。
そこで本章では、高齢者に運転免許を自主返納させる相談ができる窓口を紹介します。
相談は「運転適性相談窓口」で可能
全国の運転免許センターには「運転適性相談窓口」というものが設置されています。
ここでは運転に自信のない高齢者はもちろん、高齢ドライバーに自主返納を勧めたい家族も相談をすることができます。
運転適性相談窓口では、運転に自信がない高齢者に対しては、今後も車に安全に乗り続けられるための指導や、返納によって受けられる特典や各自治体の支援の紹介をしてくれます。
家族が相談した場合には、高齢ドライバーに対する説得の方法などを教えてくれます。
運転適性相談窓口は各都道府県に設置されているので、警察庁のホームページにある「安全運転相談窓口(旧運転適性相談窓口)について」から、窓口の場所を確認しておきましょう。

まとめ
- 高齢者による交通事故は他の世代に比べて2倍以上も発生している
- 主な原因は「身体能力の低下」と「車の操作ミス」によるもの
- 自主返納は「しない」のではなく「できない」という高齢者も多い
- 自主返納によって受けられる特典はあるものの、根本的な問題を解決する必要がある
- 家族や医師が説得し、車がなくても生活できる環境づくりをするのが大事
- どうしても車の運転をやめない場合、強制的に免許停止させる方法がある